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島の研究なら何でも有り!国際島嶼学会に参加しました。

ISISA2014の主要人物

台湾の澎湖大学で行われた国際島嶼学会の様子

世の中には色々な人がいるものです。ひたすらアリの研究をする人、一日中石を探している人、メジャーな外国語すべてをマスターしてしまう人…。

そんななかに、「島」をこよなく愛する人も大勢いるのです。

かくいう私も、学生時代から「離島」をひとつのテーマとして独自の活動を続けています。はい、離島や海外の秘境でボランティアツアーをする「村おこしNPO法人ECOFF」がそうですね。

しかし意外と離島というのは狭い世界だからか、学生時代に現日本島嶼学会会長の長嶋先生にお会いすることができ、そして昨年2014年にはついに「ISISA(International Small Islands Studies Association/国際島嶼学会)」なるビッグイベントに参加できました。

というのも、2014年の国際島嶼学会は台湾の「澎湖(ポンフー)」という離島が会場だったんです。ちょうど台湾に暮らしていたのでラッキーでした。

今回は、日本島嶼学会用に書き下ろした国際島嶼学会のレポートをECOFFブログでもご紹介します。

「面白い地域を、面白い人を、面白く研究するのが私の仕事だ!」

ISISA2014の主要人物

私にとっての国際島嶼学会は、前ISISA会長でシドニー大学教授であるDr. Grant Mccall(上写真左)のこの言葉で始まりました。

学者でも学生でもない私にとって、国際学会は全く初めての経験です。当然、オープニング会場に知り合いはおらず、手持ち無沙汰でたまたま話しかけたのが彼でした。恰幅が良く、風変わりなアロハを着ている彼は一際目立ち、そして豪快でした。

こんな出会いからも分かるとおり、ISISAはとてもオープンでフランクな学会でした。初めての国際学会がこのような雰囲気だったことは、今思うと本当に幸運だったと思います。

台湾大学付近の会場でのISISAオープニングカンファレンス
写真:ISISAオープニングカンファレンス

私は2009年から「村おこしNPO法人ECOFF」というNPO法人代表理事を務め、離島をテーマにしたボランティアツアーを各地で実施しています。しかし、大学で鹿児島県のトカラ列島に関する卒業論文を書いて以来、アカデミックなことをする機会はありませんでした。

自分がなぜ離島をテーマにしているのか? なぜ離島を愛しているのか? その答えは今までじっくりと考えて自分なりの答えを出していたつもりです。ですが、ここ最近はNPOの仕事自体が忙しいのを言い訳に、離島と真正面から向き合う時間が取れていなかったように思います。

ISISAでは、その答えを改めて考えさせられ、気づかされることが多々ありまりました。なぜなら、すべての人が離島という切り口であらゆる事象について研究しているからです。これまで自分では考えなかったような取り組みや問題をたくさん聞くことができたのです。

つまるところ、ISISAをはじめとする島嶼学会の本領はここにあることに気づきました。一般的な学問は専門性が極めて強く、基本的には、経済学なら経済のこと、数学なら数字のこと、心理学なら心のことしかテーマになりえません。しかし、ISISAの共通点は島嶼です。島嶼に関することなら何でも発表の対象になり得るのだと気づき、大きな衝撃を受けました。

台湾のハワイ・澎湖列島へ

台湾の離島「澎湖」の美しい海
写真:台湾の離島「澎湖」の美しい海

ISISAのオープニングは台湾大学付近のレストランで行われ、その翌日から澎湖諸島に移動し国立澎湖科技大学で学会が開催されました。3日間朝から夕方まで世界各地の離島での研究が発表され、ディスカッションが行われました。

100人以上の方の研究発表があったため、6つのテーマに分けて異なる会場でプレゼンテーションが行われました。5日目はフィールドトリップということで「七美(Chi-Mei)」という風光明媚な離島を訪れ、澎湖諸島への知識を深めることができました。

台湾の澎湖の離島「七美島」でもっとも有名なダブルハート
写真:「七美島」でもっとも有名なダブルハート

数ある発表のなかで特に興味深かったのは世界各地の離島における「移民問題」です。正確に言うと発表ではなく、ある研究者の発表に関する議論から発展した話題なのですが、このように話題が生まれるのもとても面白い経験でした。

ご存知のとおり離島は外界から隔絶されているため、その島独特の文化や自然を今日まで維持してきています。これは離島の魅力でもありますが、同時に外部からの文化や人間を排斥してきたという面も少なからず有ります。もちろん、外部への寛容度は各島によって様々です。

日本を例に挙げると、小笠原諸島のように移民で構成された島や、ある程度の面積を持つ島は、外部への抵抗が少ないと言えます。反対に、人口の少ない島や何世代も前から暮らしている方が多い島では、外部への抵抗が強い傾向が一般論としてあります。

これらのことは、私がボランティアツアーを実施しているなかで痛切に感じさせられたことで、何の思慮もなく、これは日本特有の文化ではないかとぼんやり考えていました。

ですが、その場に集まった、それこそ世界中の方も同じような問題を抱えていることが分かりました。つまり、離島での移民への風当たりがいかに強いのか、また逆にほとんど感じられないのか、という話題が生まれたのです。

この話題をおおざっぱに説明すると、植民地化された歴史のある島や、もともと移民で構成された島は移民への寛容度が高いが、そうでない島は移民への寛容度が極めて低いということです。極端な例だと、移民はその島で仕事に就けなかったり、恋愛すら難しいことがあるそうです。

台湾の離島「七美島」で歓迎を受ける
写真:七美島で地元の中学生太鼓グループから歓迎を受ける

離島を愛する者としては、ぜひ外からの人々もおおらかに受け止めて欲しいと思うのですが、しかしそうでないからこそ、やはり島々にはそれぞれの個性があって面白いのだと改めて考えさせられました。

個人的には今回の経験で、自分の離島への学術的な知識や英語力の低さに大きな反省を抱くことになりましたが、英語で勝負できないのならと現地の方と下手な中国語で会話をしたのは良い経験になりました。

台湾に暮らし、今後台湾で活動していくつもりの私にとって、澎湖を訪れ現地の方や澎湖大学の先生方とたくさんお話をできたのは大変価値のあることでした。

台湾の澎湖大学でいよいよ国際島嶼学会が開催された

特に、

・澎湖の本格的な歴史が始まったのが約400年前で、その後は移民が中心となって島が出来ていったこと
・山のほとんど無い島でありながら水に困るようなことはほとんどないということ
・意外にも物価が安いこと
・エコツーリズムを推進しており島の農家のほとんどが有機栽培であること
・全エネルギーの10%を風力でまかなっていること

…等は興味深いことでした。

先ほども触れたとおり、離島には外部への寛容度が高い島と比較的低い島がありますが、澎湖は前者であると言えそうです。

離島は「小さい」から「おもしろい」

台湾の離島「澎湖」の老街
写真:台湾の離島「澎湖」の老街(旧商店街)

ところで、離島の面白さはたくさん有りますが、そのなかの1つが「小ささ」であると思います。

逆説的なようでありますが、小さければ色々な可能性が生まれるからです。例えば、陸続きの巨大都市で有機栽培や自然エネルギー発電量を増やそうとしても無謀ですが、小さければそれができます。都会では会うことが難しいキーパーソンにも意外にも遭遇しやすい利点もあります。

この小ささに、島民のフレンドリーさが掛け合わさると様々な化学反応が生まれるとは思いませんか?

実は、台湾には主に「澎湖」「馬祖」「金門島」「緑島」「蘭嶼」「小琉球」の6つの離島しかありません(無人島やその他特別な人しか上陸できない島を除きます。また、澎湖、馬祖、金門の離島には複数の島嶼群が含まれます。詳しくは台湾Wikipedia「中華民國島嶼列表」で)。

この内、馬祖、金門島はご存知のとおり中国大陸に近く、また古くから暮らし続けている原住民の方々がいます。蘭嶼は台湾最後の原住民の楽園と言われており、島内にセブンイレブンを開店させるか否かで大きな議論があったほど保守的な島です(なお、セブンイレブンは2014年9月に開店しました)。残りの緑島、小琉球はかなり小さな島です。

こうして、台湾のその他の離島と澎湖を比較すると、澎湖は、色々な取り組みができる可能性が最も高い場所のように思われました。移民で構成され、ほどよい小ささの澎湖諸島。大変興味深い地域だと思います。

そこで私はもう一度、今度は島の方々が口をそろえて「最悪だ」と言う冬に澎湖を訪れることに決めました。澎湖の「最悪な」季節も経験することで、より澎湖を理解したいと強く思ったからです。

ところで学会の最後の最後で、私はなぜか壇上に立たされました。今回の学会を取り仕切ってくださった台湾の関係者に感謝を伝えるセレモニーで、いつの間にかプレゼントを渡す役になったのです。

予想外のスピーチにとまどうECOFF代表
写真:予想外のスピーチにとまどうECOFF代表

私はただ立ってニコニコしていればいいだけだからと言われていたのに、一緒に壇上に上がった他の方が会場に向かってお礼のスピーチをしてしまったのだから大変です。なんとかその場は取り繕いましたが、大勢の目の前で不得手な英語で話したのは恥ずかしくも良い思い出となりました。

ISISAでは、改めて島の面白さを感じる有意義な1週間を過ごせました。ありがとうございます。