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繋ぎ目をまた一つ

朝起きると、初日と比べてかなり涼しくなり、肌寒さも感じました。

八幡平での10日間も最終日。ここでの最後の朝食を済ませ、馬房の方の作業を開始。

10日目にして作業の工程も理解し、具体的な指示がなくてもその場その場で必要な行動ができるようになってきました。それでも、まだまだ学びと失敗はあり、今日は馬を放牧から戻す際に急に暴れられてしまいました。馬それぞれの感性を理解するには、やはり10日では足らなすぎるようです。それだけ、彼らは奥が深く、色んなことを思っているということ。

彼らにとっての真の幸福を決めつけるわけではありませんが、引退馬が受けるシビアな現実があふれる中、マッシュルーム生産など、持続可能なシステムを構築し、継続的な引退馬の飼養を実現させているこの農場に来れた彼ら引退馬は、とても幸せだろうと、繰り返し思い至ります。

間近で巨体が跳ねるあの状況には多少萎縮してしまいましたが、最後の日に、彼らの元気な様を、体で実感できたことを嬉しく思いました。

作業を進めながら、お世話になった職員さん達と話し、お世話になった旨を伝え、感謝の念を伝えていきました。職員の皆さんは、また来ることを歓迎する意思を返してくれました。感無量です。

気づけば作業は大方終わっていました。作業の工程に慣れただけあり、作業は初日と比べスムーズになっており、心の中は次の作業に移る気で満たされていました。

今日が最後だ、としみじみ過ごすというより、これからも長く続く日常の一つを過ごしていっているような感覚でした。

それだけ、この10日間はあっという間だったと感じました。

帰りの支度が終わり11時を回ると、北大の方から来た、研究生のインタビューを受けました。

ソーシャルビジネスについての観点に着目して調査をしており、引退馬の出す堆肥でマッシュルームを作って利益循環を作っているジオファームの経営形態に興味を持ち、お越ししたようです。

ちょうどジオファームにボランティアで来ている私達若者の考えや意見も聞きたいとのことで、インタビューに応えることになりました。

どのようなきっかけでジオファームを知ったか、来る前に引退馬という存在や、またその現状について知っていたか、その現状についてどう思い、その上でこのジオファームのことをどのように考えるか、ここで得た学びをどう活かすか、等等たくさんの質問をもらいました。

答えていく中で、この10日間の総括をしていくようで、たくさんの教訓を、この農場から得させてもらったことを実感していきました。

インタビューが終わると急いで送りの車へ荷物を載せていき、船橋さんご夫婦に揃って別れの言葉を伝えました。慶延さんの運転する車で駅まで送ってもらいました。

行きの電車がギリギリだったため、最後の集合写真を撮る暇もなく、駅に着いたらちょうど電車が来たため、慶延さんに最後の別れの挨拶も早々に、4人で雪崩込むように電車に乗り込みました。今回載せた画像も、新幹線から八幡平の方を撮ったものになります。

本当にあっという間だった10日間、どんどん離れていく八幡平。また来たいという思いが沸々と湧くばかりでした。

今回のエコフに参加し、ジオファームの事業に参入させてもらうことで、引退馬と共に生きようとする人々とかろうじて近い目線で、現実を見ることができるようになりました。引退馬と共に生きようとする人達が抱える現実、走れなくなった馬達の生末は暗いものばかり、そんな重いイメージを変えるように、その現状の抜け道を指し示すかのように、ジオファームの皆さんは引退馬の余生を支えていっています。

馬に余生を過ごさせるだけでなく、それを継続可能にする利益循環のシステムの確立やマッシュルームの生産をしていくことで、社会の流れに引退馬の生み出すものを組み込んで、社会貢献と共に彼ら引退馬の現状を伝えていく努力を重ねています。

世には大きな意味、意義を持つものが散見され、それぞれで、それぞれの度重なる努力や想い、時が詰まっています。

そしてそれを知り、他に「繋げる」ということ。人に伝えるだけでも、その存在を知る人が一人増えるだけでも、それには大きな価値があると感じます。小岩井農場に訪問した時も感じたことですが、「繋げる」ということ、「伝える声」というものは大小関係なく、重要な意味や意義を持っています。それぞれの場所で起こっている現状は、そこに行かなくては深く知ることはできません。ですが、その場所すら知らない人にとっては、最初から存在しない場所に等しくなるわけです。

そんな中で響く「伝える声」というのは必然的に、人々の認識を変える、強いきっかけになることでしょう。

今回の活動を終えて自分も、まず帰ってできること、まずするべきは「伝える」ことだと強く思いました。

「知らない」が「知っている」に変わった人にほぼ共通してできる、大きな意義と意味を持つこと。それが「伝える」、「繋げる」ことなのです。

なので、この文章が他の誰かに届き、今回のことに興味を持ってくれることを願っています。僕自身、エコフに書かれたジオファームのことや、歴代でジオファームにボランティア活動をしてきた人達の体験記を見たことで、この活動に参加するに至りました。 

今回の私達の活動と体験記が、次に誰かがこの農場に訪れて活動するための、繋ぎ目になることを願っています。

改めて、この活動を発信してきたエコフの皆さん、多くのことを与えてくださったジオファームの皆さんとお馬さん達、本当にありがとうございました。ここで得たものを一生握りしめて生きていきます。

長くなりました。ここまで読んでくださりありがとうございました。